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中小企業にとっての改正注目ポイント

今回の改正で中小企業に関連しそうなものにポイントを絞りました。

あくまで、対象となるのは閉鎖的な※1中小企業です。

※1閉鎖的な・・・株式の移転をするのに制限のある会社。上場企業以外の会社では、たいてい「株式の移転には取締役会の承認が必要」などといった内部規約が存在している。

(1)有限会社がなくなる

有限会社にかかわる方々にとって一番気になるところではないでしょうか?
有限会社法が会社法にまとめられたことによって、改正後は有限会社を作ることができなくなります。しかし、あくまで新しく作ることができなくなったということであり、これまで存在していた有限会社が直ちに消滅するという意味ではありません。有限会社のままでも、改正後は「特例有限会社」として存続可能です。

(2)資本金の規制撤廃

数年前に、起業を支援するため確認会社(俗にいう1円会社)の特例ができました。この制度の成功もあって、改正後は、確認会社でなくても、特に資本金の制限なく会社を作れるようになりました。
これまでは、有限会社で300万円、株式会社で1000万円の資本金が会社設立時に必要であり、起業の障壁となっていました。しかし、スタート時にそれほど資金を必要としないIT関連の会社の台頭により、資本金の制限が無くても会社を作れるようにすべきという結論になりました。そのため、今後は資本金1円であっても会社を簡単に作ることができるようになります。
なお、これまでに確認会社で起業した会社は、5年以内に資本金を増資しなくても解散する必要はなくなりました。しかし、登記簿にはその旨の解散の文言が登記されてしまっているため、その旨を抹消する登記が必要になります。この資本金の制限撤廃を利用することで、会社決算書の未処分損失を整理することもできそうです。

(3)役員について

★役員とは、取締役や監査役といった会社の幹部のことです。

A.役員の人数は取締役最低1名監査役いなくてもOK!

これまで株式会社では取締役最低3名、監査役の設置は絶対必要でした。改正後は取締役一人でもよくなります。監査役がいない場合は、取締役が監査まで行うことになります。
なお、取締役一人の場合は、その役員は単なる取締役でしかありません。『代表取締役』の呼び名が欲しい場合は、複数の取締役が必要です。 

ひとことコラム:「名前だけの役員」は?

これまで、多くの中小企業では「ワンマン社長」が実権を握っていました。ところが、そのような会社でも、法律のために3名以上の取締役と監査役を名前だけでも用意する必要がありました。今回の改正では、そのような実質と形式のギャップを埋めることができるようになっています。この件について視点を変えて考えてみると、「名前だけの役員」は廃止したほうが無難だと思われます。
これまで、社長の身内の方などが、『法律だから仕方なく』役員として登記されていたようなケースが多くありました。しかし、これからは名前だけの役員は必要ありません。それなのに、これまでどおり役員として登記をしているようなケースでは、役員の経営責任などを問われた場合に、「自分は名前だけで、経営にはタッチしていない」といった言い逃れが難しくなってしまうのではないでしょうか?

B.役員の任期は定款によって、最長10年まで延ばせる

これまでどおり、原則は取締役2年、監査役4年ですが、定款にその旨の記載があればそれぞれ10年まで任期を延ばすことが可能になりました。


ひとことコラム:「任期が延びると」?

任期が延びると単純に利益になるのは、役員変更の登記費用が節約できることです。
これまでは、2年に1回は役員の変更登記をする必要がありました。それが、任期を延ばせば回数を減らすことができます。しかし、不安点もあります。たとえば、任期を10年とした場合、どうやって役員変更の登記を忘れないように管理するかです。登記には期限があり、その間に登記しないと、過料等の罰則を受ける事があります。もう一つは、役員が任期満了までの役員報酬を要求してきた時です。
取締役などの役員は任期の途中でも解任することができます。しかし、その解任に正当な理由が存在しない場合、その役員が莫大な役員報酬を要求することも考えられるのです。

(4)機関について

会社の機関とは、株主総会や取締役会などの意思決定機関です。一般的な中小企業では、会社所有者と経営者が同一化しているケースが多く、あまり機能しているとはいえない状態でしたが・・・。

A.取締役会と株主総会

これまで常設だった取締役会を設置しないことが可能になりました。また、取締役が3人未満のときは取締役会を設置できない事になります。ここで注意すべき点は、取締役会が存在しないという事は、株主総会がすべての審議を行えるということを意味します。すると、株主の権限が増大するため、経営陣と株主が異なる場合で、株主が経営陣に批判的なケースでは株主総会が紛糾する可能性が生まれます。

B.会計参与

まったくの新制度です。設置すれば、会計士または税理士が会計参与として会社内部で活動することになります。これまで、顧問として外部から関わってきた会計の専門家を、より大きな責任と権限をもって会社に招くようなイメージでしょうか?「計算書類の信頼性が上がる」、「経理のレベルアップ」などのメリットが予想されますが、すべては今後の成り行きを見てみなければなりません。

ひとことコラム:定款の重要性

今回の法改正の基本趣旨の一つとして、「法律での制限は最低限とし、あとは定款による個別の会社自治の裁量権限を増す」ことが挙げられます。

改正後では、会社の憲法ともいうべき定款の内容によって、会社に対する評価が変わるかもしれません。
定款の規定の仕方によって、会社の方向性や運営に関する考え方が見通されてしまうかもしれないのです。また、新商法の規定を上手に定款に組み入れることで、将来の『まさか』の事態に救われるかもしれません。これらは少し大げさだとしても、改正前となんら変わらない定款の内容では、少なくとも「定款による会社自治」に対して関心が無いという事だけは伝わります。

そして、今回の改正では、債権者などの会社の利害関係人は『会社に対して定款の閲覧を要求できる』ようにもなりました。定款の重要性が増すことで、近い将来、取引を開始する前提として定款の閲覧を要求されるようになるような時代が来るかもしれません。

また、権限が増すということは、当然責任も増大することになります。
定款の重要性が増す以上、「うちの会社の定款がどうなっているかわからない・・・」ではやはり物足りないところです。是非、この改正を機会に、新会社法のエッセンスを活かし、会社の現状と将来への展望を反映させた定款に作り変えることをおすすめします。